経営コンサルティングの現場

『一品一様』の企業

先日、とある製造企業を訪問させてもらいました。その企業では「顧客の要望に合わせた一品一様の製品」を製造しています。

営業担当者は「顧客の我儘をどれだけ聞くかが重要。楽ではないが、そうやってきたから今の自社がある」と言います。

標準品の製造・販売は、製品が目に見える形で存在するため売りやすいというメリットがあります。しかし多くの場合「規模の経済」が働くため、大手に参入されれば価格面や営業力の面で太刀打ちできません。顧客の要望を聞き、規模の経済が働かない分野に行くことが中小企業の生き残る道の一つだと思います。そのためには「柔軟な経営体制」と「営業力」が必要となります。

今の中小製造企業は「営業機能の構築及び営業力強化」が大きな課題です。それは新たに会社を引き継ぐ30~40代の社長の役割と思います。

「ベテラン」と「若手」の違い

先日、製造企業にコンサルティングに行った際、「ベテラン」と「若手」の大きな違いについて、非常に勉強になる意見がありました。
どうやって若手の技量を上げていくかという話の中で、ベテランの方々から
「作業の根本が理解されていないように感じる。ボルト一本締めるのにも機械全体の中で意味があって締めている。全体への影響を考えて締めるのと意味が分からずただ締めるのでは最終的な機械の精度が変わってくる」
という意見がありました。

何を目指してやっているのか、自分が行っていることの意味を認識することは、作業の精度に関係すると同時に本人の仕事観にも影響します。

『見て盗む』という昔ながらの技術継承が困難になり、ベテランの技術を数値にして見える化することの重要性が高まっています。
ですがこうした「ベテランの感覚」を作り上げている根本の考えを若手に伝えることを合わせてやっていくことが、10年後・20年後に企業の明暗を分けるのではないかと感じました。

目標

コンサルティングを行う際に、目標を提示される場合とされない場合がある。
提示される場合、例えば「売上高~%アップ」や「生産効率~%アップ」あるいは「~取得の指導をしてほしい」という形で、コンサルティングが開始される前の段階で提示される。目標が提示されない場合、「~部門の改善を行ってほしい」「新商品の拡販を手伝ってほしい」といった形で提示される。

一般的に、目標がある方が成果は上がると言われる。目標設定を行い進捗を管理することで、確実な成果を出す意識づけを行う事が出来る。
しかしその弊害もある。多くの場合コンサルタントが関わるプロジェクトの目標は社長(もしくは管理者)が決めるため、実際に改善活動を行う作業者側にとってしんどく、最終的に数字合わせになってしまう危険性がある。また自部門の目標達成に目が行くあまり、会社全体の最適に結びつかないことが考えられる。
コンサルタントにも同様のことが言える。コンサルタント側も目標に対し責任を負うあまり、目標達成ばかりに目が行き、従業員の意見や活動、成長を評価しなくなる恐れがある。

常に目標を見つつ、同時に目標から一歩離れた視点で見る必要がある。こういったことを意識せずとも出来る人がいる。しかしそうでなくても、事前の準備で対応することが出来る。またそれは一歩離れた立場にいる人に参加してもらい、意見をもらうことでもある程度防ぐ事が出来る。

フレームワークと目的

コンサルティングのために会社を訪問する。経営状況の改善に向けて社長もしくは従業員と話をする。

当然のことながら準備をしていった方が好ましい。その日何を話すのか、どういった方向で話を進めていくのかを事前に決めておく。「無防備」で臨まない。
以前に優秀な研修講師の話を伺ったことがある。研修をPDCAとして見ると、当日の実施は一見Dに見えるが、事前の準備こそがDで当日の実施はCの方だと言う。実施の際には受講者の反応をチェックし、終了後に修正する。

成果を出している先輩コンサルタントを見ていると、何らか自分の得意なフレームワークや解決法を持っていることが多い。私が見てきた中では、それはその人独自のものではないし、最新の理論でもなかった。SWOTだとか、カイゼンのストーリーだとか、調べればすぐに手に入る手法だ。だが彼らはそれを自分の武器にしている。例えばある人はSWOTを使っても分析の深さが違い、答えの具体性や説得力がまるで異なる。精度が高く、使用に迷いが無い。

現場においてフレームワークを利用した方が良いのかは、正直言ってまだ分からない。だが無防備で事に当たらない方が良いことは確かだ。その準備の方法としてフレームワークは役に立つ。

経営コンサルタントの日常

今回は参考までにコンサルタントの日常について書きたい。

コンサルティングはそれほど頻繁ではない。一社につき月1~2回の訪問が一般的だ。同時期に数社引き受けることはもちろんあるが、実際に改善活動を行うコンサルではせいぜい4社~5社同時が限度だと思う。それだけ時間外で行うことが多い。

改善の方向・方法について考え、必要な資料を作成し、必要に応じて調べ物をする。また時にはコンサル日以外でも会社を訪問し、必要な打ち合わせをしたり分からない点を教えてもらったりする。「打ち合わせはコンサルティング日に行えばよいのでは?」と思うかもしれないが、相手はコンサルの時間後には通常の業務を行わなければならないため、別枠で時間を取ってもらう方が良い。弊社ではこの打ち合わせは無報酬としている。

こうしていると2~3社を受け持つだけでもそれなりにやることが多くなる。それに加えてコンサルタントは会社の進歩に後れを取らないように勉強していかなければならない。競争の激化や経営環境の変化から企業は改革・改善の速度を増しているため、経験を積んだコンサルタントでも知識がすぐに時代遅れになってしまうと聞く。企業のコンサルティングを行うこと自体からも勉強させてもらうことが多くあるが、それ以外にも出来るだけ学び、インプットを高めていく。
独立すると「~時に会社に行かなければならない」ということが無くなる。そのため時間があるように思われるが、そうでもない。何もしないとあっという間に時間は過ぎてしまうため、自分自身で管理する必要がある。ちなみにこれは本人のやる気等も関係するが、基本的には訓練である。管理すればするほど、管理できる時間が長くなっていく。そうして管理し始めると、自分自身でやるべきことを考え出し、逆に時間は無くなっていく。

それでも人から問われた時には「忙しい」とは言わない。やはり忙しいという言葉は自分自身の余裕を無くし、困っている人を遠ざける言葉だと思うからだ。

知識と「分からない」の経験

企業に行き、コンサルティングを行う。そこは教科書とは異なる世界である。

自分の専門領域について、またそれに付随する部門や業務について勉強する。それらの知識を教えることで相手から喜ばれることはあるが、それを基に直接現場を改善するのはまた別の話である。改善を担う社員の性格的な問題、会社としての慣習・風土、部門間の人間関係による壁等があり、中々前へ進まないことが多い。
また勉強をするにしても知識の限界は多い。最先端の設備やシステムについての知識、また例えば「この検査器具の校正期間は何年まで伸ばしても問題ないか?」といったような現場での具体的な問題は、どこにも答えが載っていないため、答えに窮する。

こういったときの一つの答えは「分からない」と伝えることだ。コンサルタントであっても分からないことは分からないと言う。上記のような具体的な質問には「今は分からないので、調べて連絡する」と伝える。相手はその時すぐに答えを欲しているわけではないため、実際に調べて連絡をすれば相手は助かるのだ。

もし調べても分からなかった場合、そのことを伝え「何年が適正か検証しよう」と言って担当者と一緒に作り上げていけば良い。それは例えば何年でメモリがすり減ってくるか、使われる現場によって違いはあるかを調べるなど、方法はいくらでもある。そうやってこちらも学んでいく。

コンサルティングの価値は相手の仕事が前に進むことである。その価値を伝える方法は「知識」だけではない。とは言っても「分からない」を連発して良いわけではない。そのあたりは経験である。

はじめに

本コラムは題を「経営コンサルティングの現場」としている。まだまだ勉強中の身だがコンサルティング活動をする中での発見や思うところを書いていくつもりだ。そのためにまず経営コンサルティングの現場とは何かを書きたい。

コンサルティングの現場というとコンサル先の会社に行き、そこの人たちへの研修、ミーティング、現場改善等を思い浮かべるが、コンサルティングはそれだけでなく付随する仕事が数多くある。まず仕事を取るための営業活動、コンサルに入る前のヒアリング、その後のプレゼンテーション、決まれば契約書を作成(コンサル・会社のどちらが作成するかは相手による)し、始まってからは訪問してコンサルティングをする以外に、訪問後のコンサル記録作成と勉強不足な点の調査・勉強及び資料の作成、必要に応じてコンサル日以外の打ち合わせ、そして月末には請求書を作成する。

請求書にはその月の全日程のコンサル記録を付ける。その際に一通り目を通すのだが毎回「請求金額以上の価値を提供できているのだろうか?」と考える。そして翌月への意思を新たに、請求書を発送している。これら全てをまとめて「コンサルティングの現場」だと認識している。