経営コンサルティングの現場

課題発見の目

製造業では「小集団活動(QCサークル)」と呼ばれる改善活動を行っている企業があります。4~6人程度のグループを作り、自部所の問題を自分たちで解決していく活動です。


弊社で関わっている企業に、小集団による改善活動が定着している企業の従業員と、改善活動が行われていない企業の従業員が一緒に働いている会社があります。
それぞれの従業員を比べた時、最も差がつくのが「課題発見の目」です。


同じ作業を見ても、改善活動が日頃から行われている企業の従業員は自ら課題を見つけ、改善テーマとして掲げます。また課題を発見した時点である程度解決策も浮かんでいるため、解決プロセスがスムーズです。
改善活動を行っていない企業の従業員は、なかなか課題を出すことができません。何とか絞り出しても漠然とした課題となり、原因を割り出すことに苦労します。


これは他社の経営支援を行う際も同じです。
日頃から改善活動を行っていない人は、中々診断企業の課題を発見することが出来ません。


弊社の実務補習では診断士資格を更新される方とこれから登録される方が一緒になって企業を診断します。
受講希望者の中でこれから登録される方から、「診断経験が少ない(あるいは無い)。やっていけるか不安だ」という声を頂きます。
確かに診断経験は提案内容を左右する一つかもしれません。しかし重要なのは診断経験よりも、その人が「企業にいる間にどれくらい(どのような)問題解決をしてきたか」の方です。
自身の経験の応用により、他社の経営を改善するポイントを発見することが出来るからです。


製造業で言えば、大きなポイントはQ(クオリティー、不良の削減や歩留まりの向上)とD(デリバリー、製造リードタイムの短縮)です。
Qを上げ、Dを下げることでC(原価)が下がります。また不良が減れば顧客クレームへの対応や手直し等計画外の仕事が減りますし、製造リードタイムが短縮すれば同じ数の製造をしても余分の時間を持つことが出来ます。
それらは職場に余裕を生み、従業員のストレスを減らし、定着率の向上にもつながります。


前述した経営改善が定着している企業の従業員は、それらを理解しています。彼らは最終的な成果を金額で表す習慣から、改善活動が最終的に原価を下げる活動であることを理解しています。また、一度行った改善活動は職場に定着させなければ意味が無いこともよく理解しています。
彼らは他社の製造を見ても改善点を挙げることが出来るでしょう。


将来的に独立を考えている方は、独立を意識してから準備を始めるのではなく、企業にいる間に数多くの改善や問題解決を行うことをお勧めします。多くの場合、支援現場で役に立つのは勉強してきた理論ではなく自分で問題解決を行ってきた経験です。
その経験が問題解決能力と「課題発見の目」を養います。

5Sの定着

製造現場を見た経験が少ない人でも、清掃が出来ているか出来ていないか、物が散らかっているか整えられているかは一目でわかります。
5Sは製造業の基本と言われますが、現場の整理・整頓すら出来ていない企業は今でも多くあります。そうした企業で生産性改善が課題とすれば「5Sに取り組む」という意見はもっともなのですが、5Sをどうやって職場に定着させるのかは非常に大きな課題です。


5Sの本質は、2つあると思っています。


1つは仕事の「準備」がされている状態を作るということです。整理・整頓・清掃が行われているということは、必要な時に必要なものがすぐに使える状態にあることを言います。製造業では「段取り8割」と言われるように仕事の前の準備の重要性が強調されています。適切に準備が行われていることで、計画内でスムーズに作業が行われ品質・納期を保つ可能性が高まり、突発的なアクシデントにもある程度の余裕を持った対応が可能になります。


もう1つは職場で働くメンバー全員が自分を律し、常に職場のルールを守って作業・行動をするようになること、あるいはそうなるような環境を作ることです。上記の「準備」にしても、ルール化しメンバーが守り続けることで効率の高い状態を維持できます。


5Sを定着させるとは、単に整理整頓清掃が実施される状態を作ることではなく、自分を含めた職場のメンバー全員に対し『職場のルールを守り続けさせる、守る風土を作る』ということになります。これが難しく、過去にはチャレンジしたものの、諦めてしまった職場も見てきました。


5Sが定着すれば、ムダな時間の削減やミスの低下など様々な望ましい効果が出るようになります。また一度行った改善活動の効果が長期にわたって発揮されます。これは製造業だけではなく全ての事業において言えることです。

質問

時々、コンサルティングの中で「これって~の方が良いんですか?」と、こちらの専門分野ではないことをぽろっと質問されることがあります。相手の感じから何気なく聞いただけと分かっていても、一瞬返答に困ります。どう答えるのが正解か、試されているような気になります。


分からないことなので「私も分かりません。御社ではどうしているのですか?」といった形で「分からない」と言っても問題は無いでしょう。そこから相手の会社ではなぜそうしているのかを聞き、納得できる理由があるかどうかで判断する、というのも対応の一つです。


ですが自分の意見を言う場合、判断の視点の一つとして「経営視点」があります。
例えばそれは品質面ではどうか?コスト面ではどうか?全体最適ではなく部分最適になっていないか、そのやり方で部所の目的や本来の仕事を実現できるのか?など、相手の「経営」から見てどうなのか、を考えます。


こうすることで説得力をもって質問に対処することが出来ます。ある種のテクニックのようにも聞こえるかもしれませんが、経営視点で考えることは相手の経営を診る際の基本であり、相手企業の方々と私たち外部の専門家を差別化する手段にもなります。


経営者の方は皆「ウチの業界は特殊」と言います。それに対し外部の人間である私たちは「経営という点では同じ」という視点で見ることにより、彼らとは異なる意見を出すことが出来ます。これから経営支援をしていきたいと考えている方は、ぜひ相手企業と接する際は経営視点で考えることを頭においてみてください。

『一品一様』の企業

先日、とある製造企業を訪問させてもらいました。その企業では「顧客の要望に合わせた一品一様の製品」を製造しています。


営業担当者は「顧客の我儘をどれだけ聞くかが重要。楽ではないが、そうやってきたから今の自社がある」と言います。


標準品の製造・販売は、製品が目に見える形で存在するため売りやすいというメリットがあります。しかし多くの場合「規模の経済」が働くため、大手に参入されれば価格面や営業力の面で太刀打ちできません。顧客の要望を聞き、規模の経済が働かない分野に行くことが中小企業の生き残る道の一つだと思います。そのためには「柔軟な経営体制」と「営業力」が必要となります。


今の中小製造企業は「営業機能の構築及び営業力強化」が大きな課題です。それは新たに会社を引き継ぐ30~40代の社長の役割と思います。

「ベテラン」と「若手」の違い

先日、製造企業にコンサルティングに行った際、「ベテラン」と「若手」の大きな違いについて、非常に勉強になる意見がありました。どうやって若手の技量を上げていくかという話の中で、ベテランの方々から「作業の根本が理解されていないように感じる。ボルト一本締めるのにも機械全体の中で意味があって締めている。全体への影響を考えて締めるのと意味が分からずただ締めるのでは最終的な機械の精度が変わってくる」という意見がありました。


何を目指してやっているのか、自分が行っていることの意味を認識することは、作業の精度に関係すると同時に本人の仕事観にも影響します。


『見て盗む』という昔ながらの技術継承が困難になり、ベテランの技術を数値にして見える化することの重要性が高まっています。ですがこうした「ベテランの感覚」を作り上げている根本の考えを若手に伝えることを合わせてやっていくことが、10年後・20年後に企業の明暗を分けるのではないかと感じました。

目標

コンサルティングを行う際に、目標を提示される場合とされない場合がある。
提示される場合、例えば「売上高~%アップ」や「生産効率~%アップ」あるいは「~取得の指導をしてほしい」という形で、コンサルティングが開始される前の段階で提示される。目標が提示されない場合、「~部門の改善を行ってほしい」「新商品の拡販を手伝ってほしい」といった形で提示される。


一般的に、目標がある方が成果は上がると言われる。目標設定を行い進捗を管理することで、確実な成果を出す意識づけを行う事が出来る。


しかしその弊害もある。多くの場合コンサルタントが関わるプロジェクトの目標は社長(もしくは管理者)が決めるため、実際に改善活動を行う作業者側にとってしんどく、最終的に数字合わせになってしまう危険性がある。また自部門の目標達成に目が行くあまり、会社全体の最適に結びつかないことが考えられる。
コンサルタントにも同様のことが言える。コンサルタント側も目標に対し責任を負うあまり、目標達成ばかりに目が行き、従業員の意見や活動、成長を評価しなくなる恐れがある。


常に目標を見つつ、同時に目標から一歩離れた視点で見る必要がある。こういったことを意識せずとも出来る人がいる。しかしそうでなくても、事前の準備で対応することが出来る。またそれは一歩離れた立場にいる人に参加してもらい、意見をもらうことでもある程度防ぐ事が出来る。

フレームワークと目的

コンサルティングのために会社を訪問する。経営状況の改善に向けて社長もしくは従業員と話をする。


当然のことながら準備をしていった方が好ましい。その日何を話すのか、どういった方向で話を進めていくのかを事前に決めておく。「無防備」で臨まない。
以前に優秀な研修講師の話を伺ったことがある。研修をPDCAとして見ると、当日の実施は一見Dに見えるが、事前の準備こそがDで当日の実施はCの方だと言う。実施の際には受講者の反応をチェックし、終了後に修正する。


成果を出している先輩コンサルタントを見ていると、何らか自分の得意なフレームワークや解決法を持っていることが多い。私が見てきた中では、それはその人独自のものではないし、最新の理論でもなかった。SWOTだとか、カイゼンのストーリーだとか、調べればすぐに手に入る手法だ。だが彼らはそれを自分の武器にしている。例えばある人はSWOTを使っても分析の深さが違い、答えの具体性や説得力がまるで異なる。精度が高く、使用に迷いが無い。


現場においてフレームワークを利用した方が良いのかは、正直言ってまだ分からない。だが無防備で事に当たらない方が良いことは確かだ。その準備の方法としてフレームワークは役に立つ。

経営コンサルタントの日常

今回は参考までにコンサルタントの日常について書きたい。


コンサルティングはそれほど頻繁ではない。一社につき月1~2回の訪問が一般的だ。同時期に数社引き受けることはもちろんあるが、実際に改善活動を行うコンサルではせいぜい4社~5社同時が限度だと思う。それだけ時間外で行うことが多い。


改善の方向・方法について考え、必要な資料を作成し、必要に応じて調べ物をする。また時にはコンサル日以外でも会社を訪問し、必要な打ち合わせをしたり分からない点を教えてもらったりする。「打ち合わせはコンサルティング日に行えばよいのでは?」と思うかもしれないが、相手はコンサルの時間後には通常の業務を行わなければならないため、別枠で時間を取ってもらう方が良い。弊社ではこの打ち合わせは無報酬としている。


こうしていると2~3社を受け持つだけでもそれなりにやることが多くなる。それに加えてコンサルタントは会社の進歩に後れを取らないように勉強していかなければならない。競争の激化や経営環境の変化から企業は改革・改善の速度を増しているため、経験を積んだコンサルタントでも知識がすぐに時代遅れになってしまうと聞く。企業のコンサルティングを行うこと自体からも勉強させてもらうことが多くあるが、それ以外にも出来るだけ学び、インプットを高めていく。
独立すると「~時に会社に行かなければならない」ということが無くなる。そのため時間があるように思われるが、そうでもない。何もしないとあっという間に時間は過ぎてしまうため、自分自身で管理する必要がある。ちなみにこれは本人のやる気等も関係するが、基本的には訓練である。管理すればするほど、管理できる時間が長くなっていく。そうして管理し始めると、自分自身でやるべきことを考え出し、逆に時間は無くなっていく。


それでも人から問われた時には「忙しい」とは言わない。やはり忙しいという言葉は自分自身の余裕を無くし、困っている人を遠ざける言葉だと思うからだ。

知識と「分からない」の経験

企業に行き、コンサルティングを行う。そこは教科書とは異なる世界である。


自分の専門領域について、またそれに付随する部門や業務について勉強する。それらの知識を教えることで相手から喜ばれることはあるが、それを基に直接現場を改善するのはまた別の話である。改善を担う社員の性格的な問題、会社としての慣習・風土、部門間の人間関係による壁等があり、中々前へ進まないことが多い。


また勉強をするにしても知識の限界は多い。最先端の設備やシステムについての知識、また例えば「この検査器具の校正期間は何年まで伸ばしても問題ないか?」といったような現場での具体的な問題は、どこにも答えが載っていないため、答えに窮する。


こういったときの一つの答えは「分からない」と伝えることだ。コンサルタントであっても分からないことは分からないと言う。上記のような具体的な質問には「今は分からないので、調べて連絡する」と伝える。相手はその時すぐに答えを欲しているわけではないため、実際に調べて連絡をすれば相手は助かるのだ。


もし調べても分からなかった場合、そのことを伝え「何年が適正か検証しよう」と言って担当者と一緒に作り上げていけば良い。それは例えば何年でメモリがすり減ってくるか、使われる現場によって違いはあるかを調べるなど、方法はいくらでもある。そうやってこちらも学んでいく。


コンサルティングの価値は相手の仕事が前に進むことである。その価値を伝える方法は「知識」だけではない。とは言っても「分からない」を連発して良いわけではない。そのあたりは経験である。

はじめに

本コラムは題を「経営コンサルティングの現場」としている。まだまだ勉強中の身だがコンサルティング活動をする中での発見や思うところを書いていくつもりだ。そのためにまず経営コンサルティングの現場とは何かを書きたい。


コンサルティングの現場というとコンサル先の会社に行き、そこの人たちへの研修、ミーティング、現場改善等を思い浮かべるが、コンサルティングはそれだけでなく付随する仕事が数多くある。まず仕事を取るための営業活動、コンサルに入る前のヒアリング、その後のプレゼンテーション、決まれば契約書を作成(コンサル・会社のどちらが作成するかは相手による)し、始まってからは訪問してコンサルティングをする以外に、訪問後のコンサル記録作成と勉強不足な点の調査・勉強及び資料の作成、必要に応じてコンサル日以外の打ち合わせ、そして月末には請求書を作成する。


請求書にはその月の全日程のコンサル記録を付ける。その際に一通り目を通すのだが毎回「請求金額以上の価値を提供できているのだろうか?」と考える。そして翌月への意思を新たに、請求書を発送している。これら全てをまとめて「コンサルティングの現場」だと認識している。