経営コンサルティングの現場

経営改善の「実施」(3)

経営者が改善の「実施」が出来ない理由は「習慣」と「危機感(の欠如)」にあり、それは多くの人に当てはまることと思う。

例えばこんな経験はないだろうか?
セミナーや勉強会に参加した。教わった内容は自分の仕事や日常生活において役立つものであり、ぜひ実施・習得したいと思った。しかし帰宅し日常生活に戻ると、習得したいという気持ちはあるものの何となくやる気が出ない。そうして数日後には習ったことを思い返すことすら無くなってしまう。

教わったことを確実に実施する人もいるため、これも本人のやる気次第である。しかし多くの人はそれぞれの環境で学習された「習慣」で日々を過ごしているため、例えば帰路に就く中で毎日乗っている電車に乗るなど、日常の環境に戻ることで日常の「習慣」が優先されてしまい、新たな行動は取りづらくなる。

経営者も同じである。提案された時には「実施したい」と思う。しかし日常の環境に戻ると目の前には多くの業務がある。さらに改善提案のような「習慣」に無いことの実施には精神的な負荷がかかる。「とりあえず目の前の仕事を片付けてから」と後回しにしていき、そのうち実施の意思が薄れてしまう。規模の大きな企業には実施する仕組みとしての「組織」があるが、小規模な企業ほどそういった仕組みは無く、経営者の感情・感覚に左右されてしまう。

もう一つは「危機感(の欠如)」である。
業界にもよるが、現在の中小企業の経営環境は厳しい。いつ大手との取引が無くなるか分からない、いつ強力な相手が参入してくるか分からない「これまで通り」の経営が成り立たない時代である。

そんな厳しい自社の経営環境を認識しても、なにも対策をしない経営者もいる。また一度は危機感を持ち改善を実施しても、時間経過や疲労、あるいは小さな成功によって危機感が薄れてしまう。その結果実施は持続せず、もとの「習慣」的な行動に戻ってしまう。初回で書いた企業再生が頓挫してしまう経営者は危機感が薄れていることが想定される。

自社の改善につながる提案が実施されない理由は、上記のようなことと考えている。ではコンサルタントはどうすれば良いのか、考えられることを次回から記載する。

経営改善の「実施」(2)

まず経営者の視点から「提案」を見てみたい。私もコンサルタントを雇っているため、参考とし
て私自身のことを書く。

3年前からある分野においてコンサルタントを雇っている。毎月2回の会合の中で、コンサルタン
トからは将来の姿や現状のモニタリング、打った方が良い手、将来訪れる状況への対策など、
様々な「提案」をしてもらう。提案は多くが「やった方が良い」と思うもので、実施方法まで細
かく話し合う。ちなみにコンサルタントは、お願いするにあたって5~6回会って話し合いをした
後「この人であれば」と思い契約のお願いをした信頼する相手である。

では、そうしたコンサルティングの中で私自身が提案を「実施」している割合はどうかという
と、恥ずかしながら半分程度である。有料で雇っている信頼する相手からの、見込みのある提案
であっても半分程度しか実施していない。情けない限りだが、現実そうなっている。

以前に理論研修において、こうした提案が「実施」されないという話をしたことがある。それに
対して受講者からは「経営者にやる気が無いのでは?」という意見が返ってきた。お金を払って
雇っている相手からの、自分でもやるべきと思う提案をやらないというのはやる気が無いとしか
思えない、という意見だった。
経営者視点で言えば、これは正解だと思う。実際何人かの経営者に実施できない理由を聞くと
「時間が無い」ことを理由として挙げるが、どんなに忙しくても良いと思った提案を全て実施す
る経営者ももちろんいて、何が何でもやるという気があれば(よっぽど無茶な提案をしていない
限り)実施は可能である。

そのため「経営者のやる気」が実施されない大きな理由になるのだが、そこに私なりにもう一つ
理由を加えるとすれば、「習慣」と「危機感」という人間的な理由だ。

経営改善の「実施」(1)

先日ある金融機関で更新研修を実施した。研修の後に懇親会があり、そこで以前から面識のあっ
た機関員の方と経営支援について話をした。その人は金融機関にいながら企業再生や経営支援の
現場に配属されるという少し変わった経歴を持っていた。

「再生の現場にいても経営支援の現場にいても『実施』してもらうことの難しさを感じます」と
その人は言った。要するに専門家を交えて経営改善に向けた効果的な計画を作っても、経営者自
身が実施しなければ意味が無い。また一時的に実施して成果が出ても、数カ月後にはやらなくな
ってしまう。そうして結局再生できなかった経営者をたくさん見てきた、と言う。経営状態が悪
いことは突発性ではなく生活習慣病だとも言っていた。手術をしても抜本的な解決にはならず、
普段の行動を変えなければ良くならないと。

コンサルタントとして活動しながら自分自身も事業を行っていると、「実施」してもらうことの
難しさ、また「実施」することの難しさ両方が分かる。今年度の理論研修のテーマ「新事業展開
の支援」はその難しさを理解しつつそれでも新たなことをやっていかなければならないという
思いからテーマ設定をした。研修テキストでも書いているが、特に経営者の心情に左右されやす
い小規模事業者においては「実施」に対して様々な要因が絡む。
どうすれば「提案する経営改善案」が実施されやすいのか、考えることを数回に分けて書いて
いきたい。

『品質』とは(7)

何回かに分けて品質について書いてきた。この話題はこれで最後にしたい。

中小企業の経営環境は厳しさを増している。品質は良くて当たり前、と言われる。製造業で言えば加工の精度や納期などは要求が厳しくなっている。しかし企業の、担当者一人一人の「役立ちの程度」は上がっているのか、と考えると疑問がある。

コンサルティングの品質も「相手への役立ちの程度」で測ることになる。
経営環境の厳しさから、コンサルタントを雇う余裕のある企業が減ってきたようだが、コンサルタント側も「相手への役立ちの程度」を見直す必要があるのかもしれない。クライアントの困りごとに対して「解決策を提示する」コンサルタントがいれば「クライアントと一緒に解決する」「クライアント自身の解決を促す」コンサルタントもいる。企業の状況によって答えは異なってくるが、それぞれの状況で企業の置かれた環境を考え「相手の役に立つやりかた」を工夫していくことが、コンサルタント側にも求められているのではないだろうか。

『品質』とは(6)

コンサルティングを行う際、本題である「望みの遂行」と同時に、社長はコンサルタントに対して自身の相談相手・サポート役としての品質を感じている。
もちろん本題は重要なのだが、場合によっては本題が上手くいかなくてもコンサルティングが続くこともある。コンサルタントがいることで社長の気が楽になる、社長の仕事が円滑に進む、従業員の仕事に対する態度が変わってきた等、「コンサルタントがいることによる影響」を社長は見ている。

以前あるコンサルタントが支援を行う会社への訪問に同行させてもらったことがある。そのコンサルタントはすれ違う従業員一人一人に笑顔で挨拶をし、時には軽く言葉を交わす。本題の業務遂行とは関係ない行為だが、コンサルティングの品質には大いに関係のある行為だ。

『品質』とは(5)

少し話は逸れるがコンサルタントの中には依頼を受けて、依頼された項目の遂行だけで終わるコンサルタントと、そこから派生してその他にも幅広く、長く、色々なことを相談されるコンサルタントがいる(もちろんクライアントにもよる)。

企業としては一回限りで依頼するコンサルタントよりも、自社のことを理解して色々相談できるコンサルタントの方が望ましい。またコンサルタントとしても、数多くの会社を見ることは勉強になるが、長く色々な相談をされた方が仕事や収入が安定する。
両者の違いは何だろうか?はっきりとした答えはまだ出ないが、この点について「品質」という観点で考えた。

前回「社長の望みの遂行」と「社長の役に立つこと」は異なるように思う、と書いた。
社長はコンサルタントに対して「望みの遂行・実現」を依頼してくる。それは売上高の向上であったり、社内体制の構築支援であったり、はたまた経営理念の文書化であったりする。

当然それらの遂行・実現は「社長の役に立つ」のだが、あるコンサルタントは同時にその領域とは別の領域で役に立つ。その領域とは何かということだが、社長の相談相手であり、サポート役ではないだろうか。

『品質』とは(4)

セミナーではそこから「自社の戦略的展開と品質の関係」についての議論になり、それぞれで考え、全体で議論してその話は終わった。

ここでもう一度考えたい。品質が「お客様への役立ちの程度」だとすると、私達の仕事の品質とは「いかに相手の役に立つか」ということになる。コンサルティングも例外ではなく、その品質は「クライアント企業の(社長の)役に立っているか」という尺度で測ることになる。

その観点で考えれば、重要なことは「社長が何を望んでいるのか」ということになるが、コンサルティングをした身/された身両方の経験・実感から「社長の望みを遂行すること」と「社長の役に立つこと」は微妙に異なるように思う。

『品質』とは(3)

セミナーに話を戻したい。

議論の中でこんな話が出た。
「例えば同じような製品でも、食品や医療品に使用される場合、求められる品質は非常
 に高くなる」
「ある製品に対して製造側が全く意図しない使い方をされることがあり、その場合本来
 の機能での品質とは関係ない品質が存在する。品質はお客様によって異なる」
「品質は「良くて当たり前」と言われる。お客様からしたら良くて当たり前のもの。
 満足とは関係があるだろうか」

議論をしていく中で「お客様の満足に関係する」「絶対的な何かではなく、程度」というところまで出たが、その後は出なかった。

最終的には講師から正解(というより講師なりの答え)が出された。
それによると『品質』とは「相手(お客様)への役立ちの程度」という。

『品質』とは(2)

なぜ急に品質の話をすることにしたのか、背景を述べたい。

今、関係している中小企業の中で「若者が育たない」ということが問題になっている。育たないという意味は、「技術的」にも「仕事をする人」としても育ってくれない。同じようにどうすれば若手が育ってくれるのか、頭を悩ませている企業は多いと思う。

彼らは不真面目なわけではない。真面目に仕事をするのだが、悪く言えば仕事に対して消極的で言われたことだけを行う。「良品を出すように(あるいは不良を出さないように)しよう」とか「歩留まりを上げよう」とかいうことは頭に無いのではないかと疑ってしまう(そんなことは無いとも思うのだが)。その点について考えている際に、彼らに無いのは「品質」への意識ではないかと思い至った。

私は最近特に「品質を上げなければならない」と思うようになってきた。しかし具体的にどう品質を上げれば良いのか、そもそも品質を上げるとはどういうことなのか、根本の議論を置き去りにしたまま「とにかくやらなければ」という想いに駆られる。そんな時にセミナーで「品質とはなにか?」ということを問われ、ふいに一歩立ち止まって考える機会を与えられた。

『品質』とは(1)

先日、とあるセミナーに出席した。直接コンサルティング現場からは離れるが、現場の支援に関係することなので、その時の話を数回に分けて書きたい。

そのセミナーは「品質管理」に関するもので、受講者は少数だったがその分各受講者の話も聞く事が出来た。私以外の受講者は現場の品質保証や品質管理の担当者だった。

セミナーの中で「『品質』とは一体何か、自分の言葉で説明せよ」という課題がでた。
受講者間で討議しながら考えていたが、中々答えが出ない。ある受講者は「日々、品質の保証や品質の向上という言葉を使っているが、『品質』そのものを言葉で説明できない」と言った。その受講者だけでなく、私を含め、受講者の皆が思っていたと思う。

『品質』とは一体何だろうか?『品質』は我々の仕事にとって、どう重要なのだろうか?

目標

コンサルティングを行う際に、目標を提示される場合とされない場合がある。
提示される場合、例えば「売上高~%アップ」や「生産効率~%アップ」あるいは「~取得の指導をしてほしい」という形で、コンサルティングが開始される前の段階で提示される。目標が提示されない場合、「~部門の改善を行ってほしい」「新商品の拡販を手伝ってほしい」といった形で提示される。

一般的に、目標がある方が成果は上がると言われる。目標設定を行い進捗を管理することで、確実な成果を出す意識づけを行う事が出来る。
しかしその弊害もある。多くの場合コンサルタントが関わるプロジェクトの目標は社長(もしくは管理者)が決めるため、実際に改善活動を行う作業者側にとってしんどく、最終的に数字合わせになってしまう危険性がある。また自部門の目標達成に目が行くあまり、会社全体の最適に結びつかないことが考えられる。
コンサルタントにも同様のことが言える。コンサルタント側も目標に対し責任を負うあまり、目標達成ばかりに目が行き、従業員の意見や活動、成長を評価しなくなる恐れがある。

常に目標を見つつ、同時に目標から一歩離れた視点で見る必要がある。こういったことを意識せずとも出来る人がいる。しかしそうでなくても、事前の準備で対応することが出来る。またそれは一歩離れた立場にいる人に参加してもらい、意見をもらうことでもある程度防ぐ事が出来る。

フレームワークと目的

コンサルティングのために会社を訪問する。経営状況の改善に向けて社長もしくは従業員と話をする。

当然のことながら準備をしていった方が好ましい。その日何を話すのか、どういった方向で話を進めていくのかを事前に決めておく。「無防備」で臨まない。
以前に優秀な研修講師の話を伺ったことがある。研修をPDCAとして見ると、当日の実施は一見Dに見えるが、事前の準備こそがDで当日の実施はCの方だと言う。実施の際には受講者の反応をチェックし、終了後に修正する。

成果を出している先輩コンサルタントを見ていると、何らか自分の得意なフレームワークや解決法を持っていることが多い。私が見てきた中では、それはその人独自のものではないし、最新の理論でもなかった。SWOTだとか、カイゼンのストーリーだとか、調べればすぐに手に入る手法だ。だが彼らはそれを自分の武器にしている。例えばある人はSWOTを使っても分析の深さが違い、答えの具体性や説得力がまるで異なる。精度が高く、使用に迷いが無い。

現場においてフレームワークを利用した方が良いのかは、正直言ってまだ分からない。だが無防備で事に当たらない方が良いことは確かだ。その準備の方法としてフレームワークは役に立つ。

経営コンサルタントの日常

今回は参考までにコンサルタントの日常について書きたい。

コンサルティングはそれほど頻繁ではない。一社につき月1~2回の訪問が一般的だ。同時期に数社引き受けることはもちろんあるが、実際に改善活動を行うコンサルではせいぜい4社~5社同時が限度だと思う。それだけ時間外で行うことが多い。

改善の方向・方法について考え、必要な資料を作成し、必要に応じて調べ物をする。また時にはコンサル日以外でも会社を訪問し、必要な打ち合わせをしたり分からない点を教えてもらったりする。「打ち合わせはコンサルティング日に行えばよいのでは?」と思うかもしれないが、相手はコンサルの時間後には通常の業務を行わなければならないため、別枠で時間を取ってもらう方が良い。弊社ではこの打ち合わせは無報酬としている。

こうしていると2~3社を受け持つだけでもそれなりにやることが多くなる。それに加えてコンサルタントは会社の進歩に後れを取らないように勉強していかなければならない。競争の激化や経営環境の変化から企業は改革・改善の速度を増しているため、経験を積んだコンサルタントでも知識がすぐに時代遅れになってしまうと聞く。企業のコンサルティングを行うこと自体からも勉強させてもらうことが多くあるが、それ以外にも出来るだけ学び、インプットを高めていく。
独立すると「~時に会社に行かなければならない」ということが無くなる。そのため時間があるように思われるが、そうでもない。何もしないとあっという間に時間は過ぎてしまうため、自分自身で管理する必要がある。ちなみにこれは本人のやる気等も関係するが、基本的には訓練である。管理すればするほど、管理できる時間が長くなっていく。そうして管理し始めると、自分自身でやるべきことを考え出し、逆に時間は無くなっていく。

それでも人から問われた時には「忙しい」とは言わない。やはり忙しいという言葉は自分自身の余裕を無くし、困っている人を遠ざける言葉だと思うからだ。

知識と「分からない」の経験

企業に行き、コンサルティングを行う。そこは教科書とは異なる世界である。

自分の専門領域について、またそれに付随する部門や業務について勉強する。それらの知識を教えることで相手から喜ばれることはあるが、それを基に直接現場を改善するのはまた別の話である。改善を担う社員の性格的な問題、会社としての慣習・風土、部門間の人間関係による壁等があり、中々前へ進まないことが多い。
また勉強をするにしても知識の限界は多い。最先端の設備やシステムについての知識、また例えば「この検査器具の校正期間は何年まで伸ばしても問題ないか?」といったような現場での具体的な問題は、どこにも答えが載っていないため、答えに窮する。

こういったときの一つの答えは「分からない」と伝えることだ。コンサルタントであっても分からないことは分からないと言う。上記のような具体的な質問には「今は分からないので、調べて連絡する」と伝える。相手はその時すぐに答えを欲しているわけではないため、実際に調べて連絡をすれば相手は助かるのだ。

もし調べても分からなかった場合、そのことを伝え「何年が適正か検証しよう」と言って担当者と一緒に作り上げていけば良い。それは例えば何年でメモリがすり減ってくるか、使われる現場によって違いはあるかを調べるなど、方法はいくらでもある。そうやってこちらも学んでいく。

コンサルティングの価値は相手の仕事が前に進むことである。その価値を伝える方法は「知識」だけではない。とは言っても「分からない」を連発して良いわけではない。そのあたりは経験である。

はじめに

本コラムは題を「経営コンサルティングの現場」としている。まだまだ勉強中の身だがコンサルティング活動をする中での発見や思うところを書いていくつもりだ。そのためにまず経営コンサルティングの現場とは何かを書きたい。

コンサルティングの現場というとコンサル先の会社に行き、そこの人たちへの研修、ミーティング、現場改善等を思い浮かべるが、コンサルティングはそれだけでなく付随する仕事が数多くある。まず仕事を取るための営業活動、コンサルに入る前のヒアリング、その後のプレゼンテーション、決まれば契約書を作成(コンサル・会社のどちらが作成するかは相手による)し、始まってからは訪問してコンサルティングをする以外に、訪問後のコンサル記録作成と勉強不足な点の調査・勉強及び資料の作成、必要に応じてコンサル日以外の打ち合わせ、そして月末には請求書を作成する。

請求書にはその月の全日程のコンサル記録を付ける。その際に一通り目を通すのだが毎回「請求金額以上の価値を提供できているのだろうか?」と考える。そして翌月への意思を新たに、請求書を発送している。これら全てをまとめて「コンサルティングの現場」だと認識している。