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確立と統計


第1回:世論調査(1)

このコラムで、確率・統計に関する経験を話したいと思う。もとより、学術的、論理的な話ではなく、見たり、聞いたりの雑談である。

まず、大学生のとき、アルバイトで行った世論調査である。
新聞社は、選挙前、世論調査をする。私の加入していた剣道部に毎年アルバイトの依頼が来る(ただし、私は、ある事情で剣道をやめたので、現在、剣道の心得はない)。まず、○○新聞社北海道支局(といったか、どうか、おぼえていない)の会議室で説明を受ける。どの地域へ行くかとか、どのようにサンプリングするかとか、どのように記入するかなどの説明を受ける。

ある町へ派遣された。
役場へ行く。「○○新聞社のものです。選挙人名簿を見せてください」とあいさつする。役場の人は別室を案内してくれ、選挙人名簿を見せてくれる。それを見てサンプリングする。たしか、13人になったと記憶している。どんな順番で回ったらいいか、教えてもらい、役場で自転車を借りて、その町を回る。北海道は広い。一つの家で回答を得て、次の家へ行くのだが、「ここはどのように行ったらいいですか?」と質問すると、「ああ。隣です」と指さす。隣って言ったって、地平線の向こうである。ひらすら自転車をこぐ。

当時の北海道は自民党と社会党の強い地域であった。13人に質問した。自民党を支持する人が4人、社会党を支持する人が4人、共産党を指示する人が1人であった。そのほか、社民党の支持者が1人、支持政党なしが3人いた。
しばらくして、衆議院選挙がおこなわた。北海道の選挙で当選する代議士の数は、私が世論調査をして得た結果(比率)とぴたりと一致する。私は「これはすごい」と思った。

第2回:世論調査(2)

世論調査でえた経験は貴重であった。単に確率・統計の知識だけでなかった。

質問項目のなかに「最近の政治で印象に残ることは何ですか?」があった。多くの人が「何もない」とか、あるいは「○○の汚職事件」などと答える。
そのなかの一人が、涙を流しながら「洞爺丸の沈没」と答えた。回答者のいとこが洞爺丸に乗っていたようだ。そのいとこがなくなった。
洞爺丸事故とは、1954年(昭和29年)9月26日、青函連絡船・洞爺丸が台風の影響で沈没し、1155名の死者・行方不明者を出した事故である。台風が予想されたにもかかわらず函館を青森に向けて出港した。風にあおられて航行不能となった。船長は函館側の海岸に座礁させて船を固定しようとした。結果的にうまくいかず、洞爺丸は横転した。

私のアルバイト(世論調査)は1968年であった。洞爺丸事故は1954年だから14年が経過している。それにもかかわらず、涙を流しながら、私に語るのである。

1155名という数字は重大である。しかし、今、私の目の前で、いとこのために涙を流す一人の人間がいる。この経験のあと、統計は統計、その中の一人ひとりは別、と思うようになった。

第3回:統計学の講義

 大学の科目の一つに統計学があった。先輩から「統計は大事だ」と言われたので、選択科目であったが、講義に出た。しかし、ほとんど理解できなかった。
確率・統計が数学的に教えられる。私の数学的能力が先生の講義についていかなかったものと思われる。理解できないので面白くないし、試験の成績も悪かった。

大学を卒業した後、ちょっと紆余曲折があって、そのあと、東京に本社があり、埼玉県に工場のある中小企業(製造会社)に就職した。
本社勤務のときである。会社の社員寮へ帰る方向と逆になるが、数理統計研究所の公開講座へ出席した。6回程度連続する講座であった。その研究所の人が確率・統計の話をし、その背景を話し、自分のやっている研究内容を話す。ある研究員は「景気」を統計的に観測していると話した。新聞社の人がゲスト・スピーカーとして招かれ、世論調査の話をした。すべての講義が面白かった。

何が違うのか?
私がいった大学の教授は実践的な経験が少ない。彼の頭脳に仕入れた知識を学生に一方的にしゃべる。それにくらべて、数理統計研究所の人たちはがフィールドを対象にして研究をしている。フィールドを解析し、理論を構築している。この差が決定的に違う。

第4回:理解のために(1)

確率・統計は実践しなければダメだとわかった。

私は技術者として採用され、技術部門に所属した。データを採ることは日常的にあった。平均値とか、分散とか、計算する機会も頻繁にあった。しかし、これは平板的な内容だったので、フィールドの観察をしようと思った。
朝の通勤時、最寄のバス停まで歩き、そこに到着してからバスに乗るまでの時間を観測しようと思った。しかし、これはできなかった。バスは混んでいて、乗客に押されてバスにのるため、測定が不可能であった。
東京を走る地下鉄の駅と駅の間隔(所要時間)を測定した。当時、新たに開通した千代田線はその間隔がもっとも長いと言われた(従って多く痴漢が出るともいわれた)。千代田線に乗って計ってみた。これはまあまあの出来栄えであった。しかし、ほとんどの間隔が2分ほどであって、面白いデータにならなかった。
大相撲の勝敗をヒストグラムにした。すなわち、15日の取組が終わった後、0勝15敗、1勝14敗、2勝13敗・・・14勝1敗、15勝0敗の力士の数を数えた。やってみると、0勝とか、1勝はいなくて、6勝とか、7勝とか、8勝の力士が多く、14勝とか、15勝の力士が少ないプロフィールになった。しかし、7勝の力士は、6勝および8勝の力士より少ないことがわかった。
このように、色々やってみた。

第5回:理解のために(2)

ずっとあとになって、経営コンサルタントとして、岩手県の会社で実験計画法を教える機会があった。実験計画法を使う社員は確率・統計に素人である。そこで、まず、「何でも良いから統計を採りなさい」と指示した。

 ある社員は盛岡市のラーメン店を回った。もっともシンプルなラーメンの価格を調べ、ヒストグラムにまとめた。当時、東京はラーメン・ブームであり、価格が高騰していた。700円、800円は当たり前であった。しかし、盛岡は400円とか、450円が多かった。
 ある社員は、朝のテレビ番組の星占いを調べた。すべての番組が星占いをするのだが、テレビ局による違いを調べた。例えば、調査をした社員の星座にたいし、テレビ局A、テレビ局B、テレビ局Cがどのように評価するか、毎日、記録した。それをテレビ局ごと、昨日は第3位、今日は5位・・とプロットして、折れ線グラフにした。観察を始める前、まったくバラバラの結果になるだろうと想定したが、意外、ほぼ同じ傾向を示した。

 別の会社である。測定の不確かさを教えた(昔、誤差という考えがあった。現在、測定の不確かさに変わっている)。測定の不確かさは確率・統計を基礎にした概念である。その会社の社員も、確率・統計に知識の乏しい人たちである。まず、平均値・標準偏差から教える。
 平均値のところで、社員から「なぜ、1を引いて割るのですか?」と質問された。これはサンプル平均と母集団の平均(=推定)の違いである。一応、説明したのだが、受講者の心にしみこんでいなかった。標準偏差のところでは「なぜ二乗するのですか?」と質問された。これも説明しておいたのだが、やっぱり質問があった。バラツキを正の数にするための便法であるにすぎないのだが、初めて聞く人には理解困難なようだった。
 この後、汗をかきながら測定の不確かさまで説明した。ひととおり、時間内に説明しおえたが、社員のほとんどが理解していないことは明らか。失敗であった。

第6回:母集団の推測

 そもそも、確率・統計とはどういう学問か。これを理解しよう。

確立・統計とは、母集団を定義し、その母集団を推測する方法である。まず母集団を定義しなければいけない。日本国籍をもっている人と日本に住んでいる人は違う。18歳未満と18歳以下とは違う。その母集団は人間の集団であることもあり、ある種の商品であることもあり、今後生産する製品であることもある。母集団の性質をしるため、まずサンプルをとる。次いで、サンプルから聞き出し、あるいは測定し、サンプルの性質を確定する。サンプルの性質から母集団の性質を推定する。このプロセスで数学を使う。
 もう少し、正確に言うと、「数学も使う」のである。数学だけであれば問題は生じない。数学でない部分で問題が発生する。

たとえば、総選挙で政党ごと代議士の数を予測したい場合を考えよう。
サンプルとして決められた人に「あなたの支持政党は?」と聞くとしよう。自民党の支持者は「私は自民党だ」と言うことに躊躇しないが、共産党の支持者は「支持政党なし」と回答するかもしれない。ここに誤りが入り込む。

 母集団を推測する過程でいくつもの誤りが発生する。それを理解して結果を受け取れば良いのだが、現実には、結果だけを受け取る。注意が必要である。

第7回:中小企業白書について

 前回、母集団を理解する方法の一つとして確立・統計(数学)があるが、そこには誤りが入り庫込む余地があると言った。

このコラムの読者は多くが中小企業診断士であろう。中小企業白書を読む機会がある。確率・統計の面から、私の感想を述べたい。

そもそも経営の勉強には次の三つの方法がある。①経営に関する統計を知る。②ケース・スタディをこなす。③実際の企業を支援する、である。中小企業白書を読むことは、①に該当し、中小企業の勉強に有益である。
中小企業白書は、いくつかの中小企業にアンケート用紙を送り、そのサンプルから回答を得て、回答比率から「日本の中小企業にはこういう傾向がある」と書かれている。私が関係する組織にもアンケート用紙が来て、「どう答えたらいいですか?」と質問されたことがある。

白書の内容をどの程度信頼したらいいのだろうか? 統計にともなう誤差には(1)サンプル誤差と(2)非サンプル誤差とがあるといわれる。
まず、(1)サンプル誤差である。
サンプル誤差とはサンプリングにともなう誤差である。調査機関はアンケート用紙を送る相手をどうやって選ぶのか、明らかにされていない。中小企業には、法律の定義では中小企業ではあるが、実際には大企業の子会社もあるし、独立した中小企業もあるし、下請的経営形態の会社もある。中小企業とはいっても、相当規模の大きな会社もあるし、一人の社長で経営している会社もある。アンケート用紙配布先は中小企業全体のプロフィールと相似形であるのだろうか・・?
次いで、(2)非サンプル誤差である。
非サンプル誤差とは、無回答の誤差、回答の偏りなどに細分されるが、ここでは無回答の誤差を取り上げる。次のように仮定する。回答率が60%である。回答した中小企業のなかで「景気が良くなった」という回答が60%で、「景気が悪くなった」という回答が30%であった。中小企業白書には「60%の中小企業が景気が良くなった」と書いてある。あたかもそれが日本の中小企業の判断であるように読みとれる。しかし、実は、無回答の人たちは、「景気が良くなった」という人は20%で、「景気が悪くなった」人が80%いた、と仮定しよう。この場合、簡単な計算によって、「景気が良くなった」と判断しているのは半数以下の人となる。無回答の人の判断はわからないが、無回答の経営者の判断を無視していいわけではない。

あまり簡単に信じてはいけない。中小企業白書は、上記②③とあいまって、勉強するとき判断の材料を提供してくれることがわかるだろう。

第8回:実験計画法(1)

 私は実験計画法の信奉者である。この実験計画法を説明したい。

 実験計画法はカオスのなかにある数多くの因子から影響力のある因子を特定するための手法である。

 私は、仕事で、こんなふうに使う。
ある新製品を作る。その生産工程には品質に影響する数多くの因子がある。温度、圧力、放置時間、部品仕入先、作業者Aと作業者Bの違い、などが品質に影響する。どの因子はどの程度の影響力があるかを、実際の生産工程で実験し、実験結果を数学的に解析することによって、知ることができる。
 これって、革命(?)である。過去、何度も生産をやってみて、その結果、「この工程の温度は45℃より50℃が良い」とか、「工程6のあと数時間放置したほうが良い」とか、わかってくる。しかし、実験計画法はその時間を短縮する。すなわち、論理的に最適条件を知ることが可能になる。

 マーケティングにも活用できるだろう。
 例えば、客は商品に魅力があるため買うと考えると、その魅力の要因は何だろうか。デザイン、メイド・イン・ジャパン、使い勝手、価格・・・などがあるが、どれが購買に寄与しているのだろうかを測ることができると思う。

第9回:実験計画法(2)

私は、行く先々の会社で、開発部門の人が生産条件を検討している場合、「それは実験計画法で答えがでる」と勧める。しかし、実際にやってみると、そんな簡単に答えがでるわけでない。今回は失敗の事例を語りたい。

第一の問題。実験計画法を使えるまでに長い時間がかかる。
多くの場合、私、コンサルティングのため、ひと月当たり2回訪問する。このペースだと、実験計画法を教えるのに3ヶ月ほどかかってしまう。もちろん、勉強と並行して実務(実験・解析)を行うのだが、時間不足で終わってしまう。

第二の問題。実験の回数が確保できないことも多い。
実験計画法で解析する場合、1回の実験だけで最適条件が見つかることは、ほぼ、ない。私は「まず、大網を張り、じょじょに範囲を絞っていく」と説明する。最適な条件に近づくため何度も実験する必要がある。しかし多くの会社はすぐに結果をほしい。悠長な実験を繰り返す実験計画法を断念してしまう。

第三の問題。再現性に乏しい。
実験は、工場で、実際の生産ラインで行う。実験室ではない。工場で思いっきりバラツキを許容して行う。したがって結果に信憑性があるはずである。しかるに、再現性に乏しい。ある会社において、実験計画法で得た結果を量産に適用し、数千万円の損害を与えたこともある。一週間ほど精神的に落ち込んだ。

第10回:実験計画法(3)

私は、前回も述べたように、実験計画法の信奉者である。現・実験計画法を、もっと簡単に、多くの人が使えるように、改善したいと思っている。
実験計画法のソフトは複数の会社から出ている。しかし、イマイチ、広がっていない。ソフトとは言え、その造りが学術的なので、工場のなかで実験をする人にとって操作が面倒なのである。

実験計画法はマーケティング担当者にも有益であろう。それらの人が簡単につかえるためには、思い切って、簡素化しなくてはいけない。

しかし、簡単でない。ある大学准教授と「実験計画法を簡単にするにはどうしたらいいだろう」と話しあうのだが、改善の方向すら出てこない。数学的枠組みがあるため、それを崩すことができない。崩した場合、もはや実験計画法ではなくなってしまう。どうしたらいいのか、「考え中」である。

ここまで、確率・統計の記事を読んでくださって感謝申し上げる。確率・統計は数学と実生活との接点にある学問である。学問とはいえない分野である。今後、まだまだ新たな発見があるだろう。


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