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中小企業診断士:更新研修申し込み
中小企業診断士のコンサルティングクオリティ向上のために・・・
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中小企業診断士と経営コンサルタント


第1回:診断とコンサルティングの違い

1.意味

「診断」という言葉が意味する実態は現状把握である。
「診断」はコンサルティングをする前に行い、コンサルティングをした結果を確認するために行う。
一方、「コンサルティング」は改善活動の指導(アドバイス。以下、指導という)であり、改革活動の指導である。

私は「診断」という言葉で「コンサルティング」を含む全体であると理解しようと考える識者がいることを知っている。
それらは一理ある。しかし、やはり無理がある。前述のように理解することが社会常識にかなっている。

2.中小企業の状況と求める専門性

私は、先輩の中小企業診断士から「財務指標を計算して社長に見せると、昔は、それだけで感心されたものだ」と聞いたことがある。
中小企業の社長にとって自分の会社の位置づけを知ることは有意義であったようだ。

今はどうだろうか?具体的改善を支援する必要がある。中小企業は具体的改善ができないために、四苦八苦している。
街の商店は、どのような商品を取り扱ったら良いのか、誰を顧客ターゲットにしたらいいのか、どのように商品棚を並べたらいいのか、一緒に考え、一緒に試行錯誤してほしいのだ。工場では、機械をどのように配置し、材料をどれだけ在庫し、どうして不良を少なくし、どのような新製品を開発するのか、具体的に指導してほしいのだ。

3.中小企業診断士に求められること

上記のような社長に対し、「現状はこうなっています」と診断してみても意味ない。

商店では「奥行き30cmの棚でなく、45cmの棚にして、棚の奥に商品を在庫しなさい」とか、
工場では「このマシニングセンターはこの位置に置くことによって作業者の歩行数が減る。年間○○円の節約になる」と言ってやらせなければいけない。

社長は、中小企業診断士と聞くと、経営の専門家であると思う。経営学の大学教授に期待することは少ないが、中小企業診断士には多くを期待する。
一般的な診断ではなく、具体的指導をしてくれるものと思う。そのような期待にこたえることのできる中小企業診断士に、自らを高める必要がある。

第2回:経営コンサルタントと経営技術コンサルタント

1.意味

経営コンサルタントとは、事業計画、人事などを含め経営の相談を受け、アドバイスする者を言う。
経営技術コンサルタントとは、例えばISO9001認証取得の指導、新入社員教育、給与体系の構築など、経営の分野において狭い範囲で指導する者を言う。

経営コンサルタントは社長を指導する。社長を動かす必要がある。時に、社長と喧嘩することもある。経営技術コンサルタントは、部長・課長と会い、彼らを指導する。
多くの場合、6カ月や12ヶ月といった契約期間があり、その期間で成果を出さなければいけない。契約期間が終われば、その会社との関係も終わる。

2.経営コンサルタントの課題

経営コンサルタントは儲からない会社を儲かる会社に変える。

私の経験では、多くの課題は「人材」次第である。良い人材に巡り合えると、比較的容易に、解決する。逆に人材に巡り合わないと解決が長引く。

経営コンサルタントが直接的に会社を動かすわけではない。会社を動かすため、まず、窓口担当者を「洗脳」する。
次いでキーパーソンを「洗脳」して、キーパーソンが会社を動かす。社長を納得させことは必須だが、社長が陣頭指揮をとることはまずない。
部下にやらせる。この部下が大事。

事業によって数億円規模の設備投資が必要になることもある。中堅・中小会社では存亡にかかわる。
社長の背中を押してやる必要がある。すなわち、「やめなさい」か「やるべきです」か、進言する。私の場合、毎日、考え続ける。
現案よりもっとも適切な方策があるはずだ・・・と。正直悩む。ある段階で社長に進言する。社長はもっと悩んでいる。誰かが背中を押してやる必要がある。
それは経営コンサルタントの役割である。

3 経営技術コンサルタントの課題

経営コンサルタントは契約期間に期限がある。したがって、次のいずれかが必要になる。
方策1:その会社で新たな課題を見つけ出す。
方策2:契約期間のうちに次の客を探す。

まず、上記・方策1について、左近の経験を述べる。
左近はある会社で環境マネジメントシステム(ISO14001)認証取得のコンサルをした。一生懸命にした。
最後は、審査機関による審査であり、それが経営技術コンサルタントの最後である。
これまでの一年間、左近が指導してきた内容に対し、審査員は異なる見解を出すことがある。弁護士と裁判官みたいな関係である。
その会社でもいくつか左近の指導と異なる見解が出された。審査が終わった。審査員は帰った。関係者(約30名)が会議室に集まった。
左近は、「皆さんに申し訳ないことをした。左近の考えが間違っている部分があった」と詫びた。そのあと、常務取締役から「左近先生、また明日から指導してください」と言われた。
かくて、10数年続いている。

次いで、上記・方策2について述べる。
経営技術コンサルタントの仕事は、多くの場合、出版社・研修機関・公共機関からの紹介で成り立つ。
小さなことでも一生懸命にする。それが、これら窓口機関の評判になる。
「あの先生を出せば、客から好評価を得ることができる」と受け止める。すると継続的にあなたに依頼が来る。
あるいは口伝えで他社に伝わる。他社から「うちにも来てほしい」と言われる。

第3回:日本で最初のコンサルタント~二宮金次郎

1.個人的な経験

左近は、ある商人に関する文献を読みたくて、静岡県・御殿場市立図書館を訪問した。職員から文献を出され、それを読んでいった。

ページを3分の2ほどくると、その商人が二宮金次郎に30両を貸した証文が出てきた。「え? 二宮金次郎って貧乏だったのか? お金など借りたのか?」と疑問に思った。
それがきっかけである。

二宮金次郎が貧乏だったわけではない。逆である。彼は金儲けの天才である。
彼は、地元(小田原)の商人・富裕農民から20両とか、30両とかのお金を出させ、まとまったお金を(今からみると)高利で武士に貸し付けた。
2~3年貸して、倍になって、返済された。地元では「金次郎に金をあずけると倍にして返してくれる」と評判がたったようである。

2.金次郎のコンサルティング

二宮金次郎は、現在でいえば、財務コンサルタント(または原価管理コンサルタント)であった。
彼の手法を紹介しよう。ちなみに、彼は、自分の方法を「仕方(しほう)」と言っている。

  • 手順1:まず、武士の家計を過去10年にさかのぼって調査する。過去10年の収入の平均値を求める。
  • 手順2:過去10年の平均値の80%で生活する計画を立てる。その計画を武士に強制する。
  • 手順3:毎年暮、成果を振り返る。

3.用語「マネジメント」

二宮金次郎は自分のやっている方法を「仕方(しほう)」と言った。実は、用語「マネジメント」と同義である。
目標を立て、目標に向かって計画を作成し、それをチェックしながら進める方法である。

日本人は、二宮金次郎の刻苦精励を学んだ。たとえば、旧文部省は多くの学校に二宮金次郎の像を建てた、北海道・帯広の開拓者が二宮金次郎を学んだ、
など。しかし、彼の手法は消えた。アメリカからmanegementが伝わり、それが広まった。ドラッカーが崇拝されている。

4.もう一度、金次郎

(弊社主催の)中小企業診断士理論政策更新研修の大阪会場の1つに大阪科学技術センターがある。最寄駅は地下鉄・本町である。
駅から会場まで約5分かかる。その道の傍らに大塩平八郎の碑がある。

二宮金次郎は、大阪で下級武士(大塩平八郎)が反乱を起こしたことを耳にし、大阪に住む知人に「どんな具合だ?」と手紙で質問する。
大阪の知人は「あいつは馬鹿だ」と返事をする。二宮金次郎は「確かに無意味な行為だった」と思う。二宮金次郎は実務の人であった。

第4回:診断士が経営コンサルタントになるための課題

1.経営コンサルタントの魅力

経営コンサルタントの仕事は楽しい。私の場合、事前に考え、考えぬいたことを経営者に提案し、それが実現されることが楽しい。
左近の提案で会社全体が動いてくれるのである。コンサルティング先の会社を訪問することは楽しみである。

2.報酬

報酬はみなさんが思うほど高額ではない。

報酬の額は、税理士が一日当たり5~7万円なので、それが中小企業経営者が考える暗黙の基準になる。
左近は、実質上、税理士の額より安く設定している。
一日当たりの報酬を高く設定して短期間の仕事になるより、安くして長期継続する方策を選んでいる。
ちなみに、一つの中小企業に毎月3日ほど行って、パートタイマー程度の報酬(毎月10万円ちょっと)をいただくのが、中小企業にとっても、中小企業診断士にとってもいいのではないかと思う。

3.二つの課題

中小企業診断士が経営コンサルタントに転身するにあたり、次の二つの課題がある。

  • 第一の課題:組織を退職する際、失業保険はもらわない
  • 第二の課題:世界一の専門領域を持つ

まず、第一の課題。
あなたは経営者のコンサルタントになる。経営者にモノを言う。経営者に失業保険はない。毎日が真剣勝負である。
その気迫に負けてはいけない。失業保険をもらってぬくぬくと暮らした人に経営者の気持ちがわかるとは思えない。

次いで、第二の課題。
小さな領域でも良いので、「これは誰にも負けない、自分が世界一だ」と自負できる領域を持つことが必要だ。
そのような領域はどうしたらできるか? 過去にその領域でほめられた経験があるとか、その領域が好きだとか、
そんなポジティブな経験があれば、それを磨いていくことによって世界一になることができる。
      

第5回:誰のコンサルタントか

1.誰のコンサルタントか

経営コンサルタントは誰のために働くのか?
社長である。中小企業ではない。この違いを理解しないと、あなたの仕事はあいまいになる。

例をあげよう。
従業員数4名の会社がある。社長を含めて5名である。従業員の一人は、遅刻が多いし、仕事の効率が悪い。
仕事の時間中に職場を離れたばこを吸いに行き、長時間をその場で過ごす。
しかし、ひょうきんな性格であり、他従業員から人気がある(ように見える)。

社長からあなたに「やめさせたい。どうしたらいいか?」と相談があったと仮定しよう。次のようになる可能性がある。

  • 社長のコンサルタントの場合:解雇に同意する。効率の悪い従業員は会社の輪(和)を乱す。
  • 中小企業のコンサルタントの場合:その従業員を改心させるようにアドバイスする。社長1人は嫌っているが、他従業員3名から人気があるので。

2.社長の幸せ

経営コンサルタントは社長の幸せのために働く。誤解を恐れずに言えば、幸せになるべきは、まず、社長なのである。

社長の幸せとは下記の状況である。
    ・受注が安定し、売上高も上昇傾向にある
    ・従業員に対し、世間並の給料・ボーナスを出している

上記の状況にするには会社を一流にすることである。一流とは、常に客が来てくれる会社である。
交通の不便な地にあって、3カ月先まで予約が詰まっている接骨院は一流である。路地裏ではあるが、客の絶えない質屋は一流である。
シャッター商店街のなかで客の絶えない和菓子屋は一流である。

一流の反対は三流の会社である。常に客をおっかけなければいけない会社である。
営業部門に多くの従業員が配属され、ノルマが課せられ、棒グラフで成績が鼓舞される会社は三流である。
一流と三流の違いは、規模でもない、有名・無名でもない、立地でもない。客の評価である。

3.社会性

会社は社会の公器であると思う。上記2で「社長の幸せ」といったが、多くの場合、社長が幸せになれば従業員は幸せになるからである。
そこに暗黙の前提を置いた。しかし、そうでない会社も数少ないが、あることは否定できない。
そのような会社は、即刻、コンサルティングをやめるべきである。

  • 社長室は立派だが従業員トイレは粗末である
  • 社長は週3日ほどしか出社しない。従業員の出金すべてに目を通し間違いを叱責する
  • 働いていない親族に給料を出している

問題はあなたにある。このような会社に遭遇した場合、「やめます」と言えるか・・・? 
お金に憐憫として躊躇してはいけない。きっぱりと「やめます」と言える実力を、普段、つけておかなければいけない。
中小企業の問題でない。あなたの問題である。

      

『中小企業診断士と経営コンサルタント』終わり


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