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「人」の問題

更新研修の中で「自分は大企業に所属していて中小企業をよく知らない。自分の提案が中小企業に通用するのかが分からない」という声を聞きます。
私達中小企業診断士は、経営について一通り学んでいます。しかし現実に中小企業を支援し、成果を出すのは簡単ではありません。それは学んだことが役に立たないのではなく、中小企業の問題の多くが「人の問題」だからです。

この点について、過去に弊社に行ったコンサルティングを振り返りながら記載します。これから中小企業を支援していこうという方に、少しでもリアルな中小企業をお伝えできればと思います。

減らない不良・顧客クレーム

企業規模50名の製造企業である。
この会社はISO9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得していて、毎月1回不良・クレーム対策会議を行っている。我々はそこに出席・アドバイスする形で支援を行っていた。
この会社が抱える大きな問題は、不良・顧客クレームである。扱っている素材自体が気温や湿度の変化に影響を受ける難しいものだったこともあるが、ちょっとしたミスによる不良が多発して止まらない状況だった[1]。
会議には古参の従業員や後継者である社長の子息も同席し、一つ一つの不良に対する改善案を検討し現場で実行していった。しかし一向に不良は減っていかなかった。

上記は実際に弊社で支援した例です。正直に申し上げると、私たちはこの会社でクレーム削減における成果を出すことが出来ませんでした。
不良の対策手段は、一般的に作業の標準化や情報の共有などがあります。支援の中ではそれらを提案し実施もしましたが、不良は止まりませんでした。

原因

今振り返ると、原因ははっきりしています。従業員の意識です。

数名の古参従業員以外、当社の社員は「仕事」をしているのではなく「作業」をしていました[2]。

この傾向はクレーム対策会議のメンバーも同じです。現場における不良対策の実施は会議のメンバーが中心となって行っていましたが、当面のクレームに向けた是正処置はすぐに実行されるものの、長期的な問題への対応は中々実行されないところがありました。
作業の標準化などもその局面では行うのですが、問題意識を持って仕事全体に波及・徹底させるという動きは見られませんでした。
要するに、全体的に人が育っていなかったのです。

なおこの会社はISO9001の認証取得をしていたため、力量表や教育訓練計画、目標制度などは一通り揃っています。しかし教育訓練は機械操作等のオペレーション習熟に限定され、仕事における態度などは含まれていません。目標に関しては形式としてあっただけで、達成に向けた実際の活動はほとんどありませんでした。

支援

ではどうすれば良かったのか、というと明確な答えを出すことが難しいです。

例えばこれが理論研修の演習問題であれば「社長が~」と言うことになります。しかしこの会社の営業機能は社長一人であり、社長が足を止めれば売上が無くなります。現実に従業員に給料を支払い、当社を継続させるために営業活動を行う社長に、営業の時間を削れとは言えません(以前、社長以外に営業担当をつくることを考え他社の営業員を引き抜いたことがありますが、定着しませんでした)。

むしろ私たちが古参の従業員と後継者に対し、このままだと当社がどうなるかを説き、本気で人材育成を行うことを迫り、社長に代わって実際の育成を指揮しなければならなかったと今では考えています。それでも上手くいく可能性は低いと思いますが、まずはそれをやるべきでした。この点もまた、理論や正論ではない部分です。

中小企業の支援は「人」と向き合うこと

冒頭で述べたように、中小企業の問題の多くはこうした「人」の問題です。私たちが教科書で学んだ経営の理論や解決策は、中小企業でも実際に通用します。しかしそれは企業側メンバーが目的を理解し、問題意識を持って徹底してくれればの話で、問題はどうやってそこまでもっていくかです。

中小企業支援では頻繁にこの問題に直面します。原因を人に求めず仕組みに求めるのが会社経営の考えですが、ある程度仕組みが構築・定着するまではそれらの仕組みを運用する人に左右されます。理論説明や提案から一歩踏み込んで、相手企業の「人」と向き合うことが、中小企業支援とも言えるのではないでしょうか。



[1]「日本の製造業は品質が良い」と言われているため製造業を知らない方には意外かもしれませんが、中小製造企業では今でも不良・顧客クレームが発生しています。この会社も5~6件のクレームが毎月発生しているような状態でしたが、この会社が特殊なわけではありません。

[2]「作業」と「仕事」の違いについては、個人的意見ではありますが過去に記載しています 【ブログ:作業と仕事】


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